貴公子と偽りの恋
「おはよう、優子」

「あ、おはよう、恵子」

「今日も雨は降らないみたいね」

「雨?」

「うん。梅雨だけど、このところ雨降らないよね…」

私ったら天気の事、全然考えてなかった。今日が雨じゃなくてよかった…。

もし雨だったら、そんな日に裏庭に呼び出す女なんか、それだけでNGだわ。どっちみちNGではあるけども。


「恵子。私、今日やる事にしたんだ」

「やるって?」

「香山君に…」

「告るの?」

「うん」

「いつ、どこで?」

「お昼休みに、裏庭で…」

「そっか、いよいよかあ。頑張ってよ」

「うん。でも、そもそも来てくれるかどうか…」

「まだ伝えてないの?」

「昨夜手紙を書いて、今朝下駄箱に入れたの」

「ふーん、じゃあ大丈夫でしょ? 貴公子は優しいらしいから」
< 25 / 169 >

この作品をシェア

pagetop