貴公子と偽りの恋
「そうかなあ」

「それよりさ、優子はコンタクト持ってないんだよね?」

「うん。あれ、何か怖くて…」

「そっか。眼鏡外したら、見えない?」

「ん…歩くのも危ないかもしれない」

「そうか…、じゃあ仕方ないね。でも、シュシュは外して行きなよ」

「どうして?」

「その方が可愛いからに決まってるじゃない」

「分かった。そうする」

「あ、それと、私のグロス貸してあげるよ」

「え、それはいいよ」

「なんでよ?」

「それは…、本当の私を見て答えてほしい、って感じかなあ」

「グロス付けるぐらいはいいと思うけど、いいわ。気持ちは分かるから」

「ありがとう」

実は、今日は普段はやらない化粧をして来ようかと、少し迷った。

でも、どうせ断られるなら、普段の私で断られた方が、諦めがつくと思った。髪型ぐらいはおまけしたとしても。
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