貴公子と偽りの恋
お昼休みが近付くにつれて緊張が増し、4時間目の授業では、私の緊張はピークに達しようとしていた。

心臓がドキドキして、首から上がカーッと熱い。

頭がボーッとして、先生が何を言ってるのかも分からない。

「優子」

恵子が振り向いて、私の名前を呼んだ。

「へ? な、何?」

「先生」

「先生? 先生が、何?」

「取り敢えず立って」

恵子に言われるままに立ち上がると、椅子をちゃんと引いてなかったから、膝を机にぶつけて『ガタン』と大きな音がした。

痛いよ…

周りからクスクス笑い声がした。

「篠原、早く答えろ。おまえには簡単な問題だろ?」

簡単? ううん、香山君に告るのは、私にはやっぱり難しいよ…

「おい篠原、どこ見てる? この問題だぞ」

先生は何やら黒板を叩いている。

「えっと…」

何がなんだか分からない。頭が全然動いてくれない…

「もういいから座れ」

「すみません…」

私は座って体を小さくした。

「篠原、具合が悪いなら無理するなよ」

「はーい」

「じゃあ、代わりに…」

う、情けない…
< 27 / 169 >

この作品をシェア

pagetop