貴公子と偽りの恋
「恵子は、こ、告った事あるの?」

裏庭に向かいながら、恵子に聞いてみた。

「実は、あるよ」

「やっぱり緊張した?」

「もちろん、したよ」

「そっか」

「緊張するのは当たり前なんだから、そんな事は気にしないで、相手に気持ちを伝える事にだけ集中しなさい。分かった?」

「うん、分かった」


裏庭のすぐ手前に着いた。

「貴公子はまだみたいでよかったね?」

「うん…」

いっその事、香山君が来ない方がいいのかも…

「可哀相だけど、ここから先は優子が一人で頑張らないとね?」

「うん、でも…」

私は急に怖くなり、涙がジワッと溢れて来た。
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