貴公子と偽りの恋
封筒の中には、同じくピンクの便箋が入っていた。

俺はそれを取り出し、きちんと畳まれた便箋を開くと、真っ先に署名を見た。

署名のない手紙は、読まずに捨てる事にしている。マナーの悪い女の相手はしない。

しかし今日の手紙にはちゃんと署名があった。女性らしい字で、それでいてしっかりと、丁寧に書かれた字だ。

『3年1組 篠原優子』

「えっ?」

「何だ? どうした?」

俺が思わず声を出すと、遼が手紙を覗き込んで来たから、俺は遼の視界から手紙を隠した。

「いや、何でもないよ」

「その子も断るのか?」

「ああ」
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