貴公子と偽りの恋
篠原優子は眼鏡を掛け、髪を後ろで縛っていた。顔はよく覚えていないが、いかにも勉強一筋って感じの女だったと思う。

そこで、俺が勝手に付けたあだ名が『がり勉女』。

全く俺のタイプではないが、どんな顔で、あるいはどんな言葉で俺に告るのか、ちょっと興味が湧いた。


「なあ、裕樹」

「何だ?」

「おまえ、いつもと様子が違うな?」

「やっと気付いてくれたか」

「と言うと?」

「ヘラヘラ笑うのを止めたんだよ」

「ああ、そういう事か。『微笑みの貴公子』は廃業か?」

「ああ。どう思う?」

「いいんじゃねえの? 今までご苦労さん。これからは楽に生きろよ」

「ああ、ありがとう」

やっぱり遼は、俺の本質を分かっていたんだな。
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