貴公子と偽りの恋
ああ、そうか。髪の毛だ。

前に見た時は髪を後ろで縛っていたが、今は自然に流している。

黒くて艶やかで、綺麗な髪の毛だなあ…


「あ、あの…」

「待たせたかな? ごめんね」

しまった。がり勉女が何か言いかけたのに、被してしまった。

「いいえ、私こそ、こんな所に呼び出したりして、ごめんなさい」

いい声だ。それに、今時の女にしてはしおらしい事言うじゃないか…

「あの、私は篠原優子といいます」

「知ってるよ」

「………」

あれ? 黙っちまった。俺の言い方がぶっきらぼうだったからか?

「話って、何かな?」

「え? あ、えっと、私は…香山君が、好きです。ずっと前から、香山君だけを見てました」
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