貴公子と偽りの恋
「優子」

「あ、恵子…」

「ずいぶん長かったね?」

「え、うん…」

恵子が探るように私の顔を覗き込んでいる。

「目が赤いよ」

「そ、そう?」

「ダメだったの?」

「ダメと言えば、ダメなんだけど…」

「ダメじゃなかったの?」

「取り敢えず、保留?」

「何よ、それ。貴公子って、案外優柔不断なんだね」

保留したのは、私なんだけどね。

ああ、恵子に相談できたらな…
誰にも言わないという条件のため、学校で一番頼りになる恵子にも、相談する事が出来ない。

午後は香山君への返事の事と、お腹が空きすぎて、午前と同じく全く授業に集中出来なかった。
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