貴公子と偽りの恋
「そうか。ところで、飯はまだなんだろ? あまり時間がないぜ」

「ああ。どこかで食って来るわ。ついでに5時間目はフケる」

「フケるのか? 珍しいな」

「珍しいも何も、初めてだよ」

「そうか、おまえもついに不良の仲間入りだな?」

俺はフッと笑い、鞄から弁当を出した。

「じゃあな」

「ちょっと待て。いいもの貸してやるよ」

遼はキーホルダーから一つの鍵を外した。

「何だ、それは?」

「『悩める若者の憩いの場』、つまり屋上への鍵だ」

そう言って遼は、外した鍵を指で摘んで見せた。

「何でおまえが持ってるんだよ?」

「卒業した先輩から引き継いだ」
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