貴公子と偽りの恋
身代わりか…

俺は何であんな事を言っちまったんだろう。
思い付きと勢い、だろうなあ。

その時は、我ながらいい考えだと思った。
しかし、迷ったあいつの顔を見てたら、すごく後悔した。何て俺は自分勝手なんだと思った。

『なあ篠原優子。何も迷う事ないだろ? さっさと断りに来いよ。俺みたいな女々しくて自分勝手な男、止めておけよ』



しかし、篠原優子から返事がないまま週末になり、月曜の朝を迎えた。

駅で、ホームへの階段をゆっくり降りたら、うちの学校の制服を着た女子が、俺に向かって勢いよく走って来た。

少し茶色でショートの髪。パッチリした大きな目。

その子は俺の前で立ち止まり、息を切らしながらも元気な声で言った。

「おはようございます。裕樹先輩!」

『まさか、嘘だろ…?』
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