貴公子と偽りの恋
「急がないと、電車が来ちゃいますよ」

「おお。それにしてもおまえ、そこまでやるとは…」

「『おまえ』じゃなくて、メグちゃんって呼んでください」

こいつ、本気だ。本気で竹中恵の身代わりをしようとしている…

「本当にいいのか?」

「裕樹先輩が言った条件ですから」

『裕樹先輩』か…
確かに竹中恵は俺をそう呼ぶんだよなあ。俺はいつかは『裕樹』と呼んでほしかった。

「そうだよな。じゃあ、裕樹って呼んでくれ。俺もメグと呼ぶ。カレカノなんだから」

「はーい」

可愛く微笑む優子を見ながら、俺はこの変な関係を続ける決心をした。

元々、自分が蒔いた種なのだから…
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