貴公子と偽りの恋
ぎこちないながらも、何とか香山君と会話をしつつ、私は人の視線が気になっていた。

うちの学校の生徒がざっと10人ぐらい、同じ車両に乗ってるんだけど、私達をチラチラ見ては、ヒソヒソと何かを話していたりした。

でも香山君は、それを全く気にしてないみたい。きっと人から見られる事に慣れてるんだろうなあ。

「ねえ、か…裕樹?」

「ん?」

「駅に着いたら、別々に歩く?」

「なんで?」

「きっとみんなから注目されるし、すぐに噂になっちゃうと思うから…」

「嫌か?」

「え、私?」

「ああ」

「嫌、じゃないかも…」

「だったらいいじゃねえか。こそこそしなくても」

「ほんと? 嬉しい。夢だったんだあ」
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