貴公子と偽りの恋
駅に着いたので電車を降り、私は香山君の背中を見ながら離れないように頑張って歩いた。

香山君は脚が長いから、歩くのも速かった。

「おい。なんで後ろを歩いてるんだよ?」

香山君が歩みをゆるめ、後ろにいる私を振り向いた。

「これじゃあ、話も出来ないだろ?」

「ごめんなさい。私、歩くのが遅くて…」

「ああ、そうか…。いや、俺こそ悪かった。明日からは、もう少し早く家を出るよ」

明日?

って事は、明日以降も駅で香山君を待っていい、って事よね?
嬉しい。でも、そんな事してもらっていいんだろうか…

「私のために、無理しないでください」

「別に、無理じゃないよ」

「すみません…」
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