貴公子と偽りの恋
香山君は少し歩く速度を落としてくれたみたいで、何とか横に並んで歩けるようになった。

「夢って?」

「夢?」

「おまえがさっき、『夢だった』って言ったろ? 何の事だ?」

「ああ、あれね。私、裕樹と一緒に学校へ行ったり、帰ったりするのが長年の夢だったの」

「長年って、大袈裟に言ってないか?」

「大袈裟かな。2年半ぐらいじゃ」

「ちょっと待て。高校入って2年半だぞ、俺達」

「うん、そうだね。入学式で裕樹のこと見て、一目惚れしちゃったんだ…」

「そっか、確かに長年だな。なあ、俺なんかのどこがいいんだよ?」

「え? ん…分かんない」
< 87 / 169 >

この作品をシェア

pagetop