貴公子と偽りの恋
「分かんないのかよ?」

「うん、ごめん。最初は外見に惹かれたんだけど、今はそれだけじゃないと思う」

「俺の中身なんて知らないだろ?」

「ん…想像はしてたけど、ちゃんとは知らない、かな」

「がっかりするぜ、きっと」

「そうかな。でも今のところ、そんな事ないよ。むしろ想像以上だよ」

「そうか? 勘違いじゃないといいけどな」

勘違いなんかじゃない。香山君は私が思ったよりずっと優しいし、男らしいと思う。

知れば知るほど、好きの気持ちが増して行くのが、自分でも分かった。



予想通り、たくさんの視線を集めながら、私達は校舎に入った。

「やべえ、ギリギリだ。じゃあな」

3階へ上がったところで香山君は走り出した。

あ、私も遅刻ギリギリだ。

私も走り出そうとしたら、

「なあ、昼休み、弁当持って俺の所に来いよ」

と香山君は振り向きざま言い、走って行った。
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