貴公子と偽りの恋
私がもじもじしていたら、背の高い男子が廊下に出て来た。

水嶋君だ…。彼に頼んじゃおうかな。

「水嶋君…」

「はい?」

水嶋君は立ち止まり、怪訝な目で私を見下ろしている。

「お久しぶりです。あの、お願いなんですけど…」

「ごめん。誰だっけ?」

「え? あ、2年で同じクラスだった篠原です」

「篠原優子か!? 驚いたなあ。本当だったんだ…」

「え? 何ですか?」

「いや、こっちの話。ところで、お願いって?」

「はい。あの、香山君を…」

「ああ、分かった。
おーい、裕樹! 彼女が来てるぞー」

水嶋君は、私の耳が痛くなる程の大声で、香山君を呼んでくれた。
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