貴公子と偽りの恋
香山君がペットボトルのお茶を飲むのを見て、自分が飲み物を忘れて来た事に気が付いた。
なんだか、むせちゃいそう…

「おまえ、飲み物は?」

「忘れちゃった」

「じゃあ、これ飲めよ。むせるだろ?」

そう言って香山君は、飲みかけのペットボトルを私に差し出した。

「いいの?」

「遠慮すんなって」

私と間接キスになってもいいの? って意味なんだけどな…

「じゃあ、ちょっとだけ」

私はペットボトルを受け取り、小さいお口で本当にちょっとだけお茶を飲んだ。香山君と間接キスだと思うと、胸がドキドキした。

「ありがとう」

「おお。ここに置くから、好きなだけ飲めよ」

香山君は、微妙に開いた私との間に、ペットボトルを置いた。
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