年上の彼氏


「柊子?」

・・・わかってる。

矢崎さんは仕事をしてる。

私のように学生じゃないから、会えないときも沢山あるってこと。

私がもっと大人だったら。

私がもっと矢崎さんのことわかってあげられたら・・・考えて、考えて。

結局できるのは我侭を言わないことくらいで・・・。

矢崎さんを見つめると・・・キスをくれた。


「もっと、我侭いってもいいんだよ?柊子は我慢しすぎだ」

「え?」

「多少の我侭だったら、聞いてやれるから」

矢崎さん。

「うん。ありがとう」

その言葉と優しいキスで十分。

また頑張れるから。


少し寒くなって来たところで車に戻った。

エンジンをかけて、後ろの席から何か取り出す。

「これって何?」

「あ・・・」

矢崎さんが持ったのは私が持ってきた袋。

「あの・・・プレゼントとケーキ」

驚きながら袋に手を入れる。

「これ・・・開けてもいいの?」

「う、うん。気に入ってもらえるといいんだけど・・・」

包みを丁寧に開けて、出てきたのはキーケース。

「・・・マジかよ」

「え?」

「これ、高かったろ?」

「え・・・なんで?」

「俺、目つけてたから」

「え!?」

「今月財布買ってさ、来月あたり買おうかと思ってたんだ」

「ほ、ほんとに?」

「ああ・・・まさかもらえるとは・・・・」

マジマジとキーケースをみつめてから、

「ありがとう。すげぇ嬉しい」

飛び切りの笑顔でお礼を言ってくれて。

「だけど、今回でやめろな?」

「え?」

「こんな高いの、もう受けとらねーからな」

そう言って優しい笑顔で、頭を撫でてくれた。




< 30 / 130 >

この作品をシェア

pagetop