年上の彼氏
「秋仁は学生時代からすげぇモテてて・・・ま、あの容姿じゃ女がほっとかなくてさ」
「うん」
「だから、女には不自由してなくて、それが原因なのか深入りしないって言うか・・・のめり込まないって言うかさ」
「・・・うん」
私をチラリと見てから、ため息も混じりながらタバコの煙を吐き出して言った。
「簡単にいうと、タラシ」
「タラシ?」
「そ。彼女がいても違う女と遊ぶなんて当たり前だったし、別れるのも付き合うのも本当に簡単にしてた。付き合ってる女の事本当に好きなのかよ?ってくらい軽かったな。・・・それこそ酷いやり方で女を振ったことなんて数え切れねーし」
「・・・う・・そ・・」
「今の秋仁からじゃ、想像できないかもな。柊子には半端なく優しいから」
矢崎さんと初めてデートしたときに、言ってた言葉を思い出した。
『俺は最低な奴だった』
確かに矢崎さんは、そう言った。
それって、今、ライ君が言ってることだったのかな。
考え事をしてる私に
「大丈夫か?」
心配そうに私の顔を覗く。
「あ、うん、平気。ちょっと驚いただけだから」
ニコッと笑う私を見て、「そうか」と呟いた後、話を続けた。
「大学に入っても、基本的な部分は変わらなかったんだけどさ、紗江に出会ってちょっとずつ変わった」
「変わった?」
「ああ、女遊びが減って優しくなった・・・な」
「・・・そう」
今の矢崎さんの優しさって・・・紗江さんのおかげ?
チクリ。
胸が痛む。
だけど、次の言葉で衝撃を受けた。
「それに、秋仁は紗江と婚約までしたらしいし」
・・・・は?
「こ・・・んや・・く?」
「ああ・・・これは噂だけどな」
「・・・そう・・なんだ・・」
紗江さんとは何かあるんだろうって、普通の女友達よりは何かあるんだろうって思ってたけど・・・・婚約者だったなんて・・・。
「どうして・・・別れたの?」
ギュウっと胸を掴まれるような苦しい感覚を必死で抑えてた。