年上の彼氏
食べ終わって後片付けを終わらせると、お互いが好きな飲み物を持ち、ソファーに座った。
最初に口を開いたのは矢崎さんだった。
「なぁ・・・紗江のことなんだけど・・・」
「・・・うん」
そういえば、ライ君が『勘違いだった』とか言ってたけど・・・なんの事なんだろう・・・。
「雷太から何か聞いた?」
真っ直ぐに私を見る矢崎さんから、思わず目を逸らした。
キュッと唇を一度結んでから、
「・・・大学のときに・・・」
「大学?」
「紗江さんと・・・婚約・・・してたって・・・」
俯いて声にするのが精一杯だった。
こんなこと言いたくなかったのに・・・。
私の言葉を聞くと
「はぁ〜」
と、ため息を吐く矢崎さんの声が聞こえる。
・・・呆れちゃったのかな。
私が過去のこと聞いちゃったりしたから。
「俺が雷太にちゃんと言ってなかったのが原因でもあるけど・・・」
そう言って、矢崎さんは私の手を握った。
思わず顔を上げると、優しく微笑んでくれてて。
その笑顔を見たら、涙が止まらなくなった。
そっと私の肩を抱き寄せて
「このまま聞いてくれるか?」
頭の上から矢崎さんの声がする。
「・・・ん」
涙を拭きながら、矢崎さんに抱き寄せられた形で返事をした。
温かいぬくもりに心が落ち着く。