年上の彼氏
お姉ちゃんは車に戻ると、運転席の窓を少し開けてタバコを吸い始めた。
タバコ!?
驚いておねえちゃんを見ていると、大笑いされた。
「柊子、今日は驚いた顔ばかりね」
「だって・・・タバコってお姉ちゃんが一番嫌ってたじゃん・・・お父さんがヘビースモーカーだったからって・・・」
「・・・そうだったわね」
タバコをふかしながら、苦笑い。
今、目の前にいるのは、本当にお姉ちゃん?
「ま、家では吸わないから、柊子もお母さんも知らなくて当たり前だけどね」
半分吸い終わると、携帯用の灰皿に吸殻を入れた。
しばらく沈黙が続いて、お姉ちゃんは口を開いた。
「高校のとき、雷太と付き合ってるのは知ってるよね?」
「うん。遊びに来てたし・・・」
「雷太にお兄さんがいるのは知ってる?」
お兄さん?
「・・ううん。妹さんは知ってるけど・・・」
「小春?」
「うん」
「懐かしい」
ふっと優しい目をして笑う。
「雷太のお父さんの事は?」
「偉い人だって事は、知ってるけど・・・」
「・・・そう、そこまで知ってれば大丈夫かな」
お姉ちゃんは少し深く深呼吸をする。
「私が雷太と付き合ったのは高校1年のときでね」
「うん」
「2年生の2学期までは順調だった。雷太の家に行っても快く入れてもらえたし、お父さんも堅いまじめな人だったけど、笑顔で迎えてくれた」
「うん」
「だけどね、高校2年の2学期に雷太のお兄さんが「やりたい事を見つけた」って言って両親に内緒で大学を辞めて、海外へ行ってしまったの」
「え?」