年上の彼氏


「お兄さんは、お父さんの後を継ぐ予定で有名大学に進学して・・・だけどそこで自分のやりたいことが変わってしまったのね。それを親には言えなかった。でも、雷太には言ってたみたい」

「・・・・」

「お兄さんの話を聞いてるうちに、中途半端な気持ちで言ってるんじゃないって分かってね、「俺が父さんの後を継ぐから海外へ行ってやりたいことやれ」って、お兄さんの背中を押したの。・・・雷太にもやりたいことあったんだけどね・・・」

ライ君のやりたいこと?

・・・それって・・・

「調理師さん?」

「なんで柊子が知って・・・」

目が大きく見開いて、私を見つめる。

「秋仁さんが言ってた・・・調理師目指してたこともあったんだって」

フッと力が抜けたお姉ちゃんは、苦い笑いを浮かべ前を向いた。

「・・・そう、そうね。私とも話をしてた。小さくてもいいから店を持つのが夢なんだって。その時私も一緒に店を手伝えるといいなぁって・・・そんな夢」

お姉ちゃん。

「だけど、お兄さんが海外へ行ってしまって・・・お父さんの怒りが止まらなくて。結局雷太がお兄さんの代わりになってしまった。そのときからお父さんの私に対する態度も変わってきてね。3年になったとき・・・「雷太には婚約者が決まってる」って言われて」

「婚約者?」

「ま、初めはお兄さんの婚約者だったらしいけど」

「そ、そんなこと・・・」

「家は片親じゃない?やっぱり両親が揃ってないとエリートとしては受け入れることが出来なかったんじゃないかな」

「そんなの・・・・親がどうでも、お姉ちゃんはお姉ちゃんじゃん!」

両親がそろってないからって・・・そんなのひどいっ。

「・・・そうね。でも、肩書きは雷太のお父さんにとってはとても大切なものだったから」

「・・・そんな・・・」

「大人の事情って結構複雑だったりするからね」

私の言葉に優しく微笑んで頭を撫でてくれる。

大人の事情って・・・・お姉ちゃんの気持ちはどうなるの?

「高校3年の2月になって、雷太との事もどうしたらいいか悩んでたとき、妊娠がわかったの」

『妊娠』

この言葉にドキッとする。














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