雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
*
水彩画の授業中。
前の席に座っていた真鳥天音が、絵筆を持ったまま振り返る。
「悠里、髪伸びた?」
いつも気だるげで年齢不詳の彼は、たぶん私たちよりも年上。
アッシュグレーの髪が落ち着いた雰囲気を出していて、教室内ではお兄さん的存在だった。
「あ……言われてみれば。髪型変わったよね、可愛い」
「ありがとう。気分を変えたくて、伸ばしてみたんだ」
「紗矢花と髪型ほぼ一緒だし。あんたら、姉妹みたいだな」
そう言われ、私と悠里は顔を見合わせる。
昨年まではショートだった悠里の髪は、顎のラインを越えた切りっぱなしボブに変わっていた。
「ほんとだ。お揃いみたい」
二人で笑っていると、シルバーの指輪をつけた天音の指が、コツコツと私たちの机を叩いた。
「俺には、アレないの?」
「あれって?」
「チョコレート」
「ああ……バレンタインのチョコね」
仕方なく、昼休みに悠里と食べようと思っていた個包装のチョコを1粒差し出す。
「おー、ありがたいね」
たったの1粒なのに、天音は目を細めた。
「今ちょうど、糖分に飢えててさ」
「糖分? バレンタインのチョコがほしかったんじゃなくて、栄養のため?」
「天音君らしいね」
確かにその外見なら、女の子に飢えていたり、男友達とチョコの数を競ったりしているようには見えない。
水彩画の授業中。
前の席に座っていた真鳥天音が、絵筆を持ったまま振り返る。
「悠里、髪伸びた?」
いつも気だるげで年齢不詳の彼は、たぶん私たちよりも年上。
アッシュグレーの髪が落ち着いた雰囲気を出していて、教室内ではお兄さん的存在だった。
「あ……言われてみれば。髪型変わったよね、可愛い」
「ありがとう。気分を変えたくて、伸ばしてみたんだ」
「紗矢花と髪型ほぼ一緒だし。あんたら、姉妹みたいだな」
そう言われ、私と悠里は顔を見合わせる。
昨年まではショートだった悠里の髪は、顎のラインを越えた切りっぱなしボブに変わっていた。
「ほんとだ。お揃いみたい」
二人で笑っていると、シルバーの指輪をつけた天音の指が、コツコツと私たちの机を叩いた。
「俺には、アレないの?」
「あれって?」
「チョコレート」
「ああ……バレンタインのチョコね」
仕方なく、昼休みに悠里と食べようと思っていた個包装のチョコを1粒差し出す。
「おー、ありがたいね」
たったの1粒なのに、天音は目を細めた。
「今ちょうど、糖分に飢えててさ」
「糖分? バレンタインのチョコがほしかったんじゃなくて、栄養のため?」
「天音君らしいね」
確かにその外見なら、女の子に飢えていたり、男友達とチョコの数を競ったりしているようには見えない。