雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
それでもずっと想い続けていたのは、彼氏との喧嘩が絶えない紗矢花が、暗い表情を見せることが多かったからだ。
幸せそうな笑顔をいつも見せていれば、自分はとっくに彼女を諦めていたと思う。
一度は本気で忘れようと思い、彩乃と付き合ったこともあったが長続きしなかった。
結局、紗矢花以上に相手のことを好きになれなくて。
「――そうだ。紗矢花には、彼女ができたってことにしておいてくれる?」
「なんで?」
「黒瀬響に怪しまれてるみたいだから、カモフラージュしておこうと思って。紗矢花に逢うの禁止されたら困るし、ね」
「……遼。アンタ、ほんと重症だな」
陽介は呆れてソファの肘掛けに頬杖をついた。
「まあね。確かに重症かも」
食器棚からティーカップを一組取り出し、テーブルに置く。
「自覚あるんなら、さっさと次探せば? 誰か紹介してやるからさ」
「そうだね。そのうち……考えておく」
曖昧に返したが、それでも陽介は言葉通りに受け取ったようだった。
頬杖をやめ、険しかった表情を緩める。