雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
③君と聴く雨音
二週間が過ぎたのに……まだ覚えている。
ゆっくりと近づいてくる、整いすぎた綺麗な顔。
人形のような顔立ちのわりに、瞳の奥だけは熱を帯びていて。つい魅入ってしまった。
避けようと思えばできたのにそれをしなかったのは、遼に嫌われたくなかったから。
だからじっと息を止めて、されるがままになっていた。
唇が触れ合ったとき、嫌な感じはしなかった。
紅茶を飲んでいたせいで少し湿ったくちびる。
それは一瞬の出来事で。すぐに遼は離れていった。
遼は……どうしてあんなことをしたんだろう。
彼女がいるのに……。
私のことは妹としか見てないはずなのに。
忘れられない人と私を重ねていたなんて、複雑な気分だ。
遼にもらったぬいぐるみを抱きしめ、部屋の窓から外を見下ろす。
もう雪はすっかり融けて、春の風景に変わっていた。白から緑に。
自分の気持ちも、これから変わってゆくことなんてあるのかな。
景色の移り変わりを見ていると、不思議とそう思えた。