雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

本当に遼の彼女なのか謎で。後日、遼本人にカマをかけてみたら『彼女がいる』との返事。

まあ、確かに綺麗な人ではあったけど、何か面白くはなかった。

優しく甘えさせてくれる兄を取られた気分……だろうか。




遼にはあれから会っていなかった。

今日も兄が遼の家の地下にあるスタジオを借りるから、一緒に来るかと誘ってきたけど、用事があるのを理由に断った。


本当は会いたい。

でも、どんな顔をして会えばいいのかわからない。

だからとりあえず、陽介に相談しに行くことにした。





赤と黒のモダンテイストのワンルームは、学生の一人暮らしにしては片付いている。


「ねえ。男の人って、好きな女の子じゃなくてもキスできるよね?」


窓辺に配置された一人掛けの赤いソファに座り、買ってきたペットボトルのお茶を飲みながら何気なく聞いてみた。


「まあ……できないこともないかな」


陽介は離れたところで床にあぐらをかき、メンズのファッション誌を読んでいる。


「俺はどうせなら、好きな子とする方がいいけど」

「好きな子かぁ。そういえば、遼の彼女って陽介も見たことあるの?」

「んー、あるような、ないような」

「どっち?」


陽介は雑誌から顔を上げて私へ視線を向けた。じっと見つめたあと、またすぐに雑誌へ視線を戻す。


「なんでそんなこと聞くんだよ?」


逆に質問を返してきた。
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