雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
本当に遼の彼女なのか謎で。後日、遼本人にカマをかけてみたら『彼女がいる』との返事。
まあ、確かに綺麗な人ではあったけど、何か面白くはなかった。
優しく甘えさせてくれる兄を取られた気分……だろうか。
遼にはあれから会っていなかった。
今日も兄が遼の家の地下にあるスタジオを借りるから、一緒に来るかと誘ってきたけど、用事があるのを理由に断った。
本当は会いたい。
でも、どんな顔をして会えばいいのかわからない。
だからとりあえず、陽介に相談しに行くことにした。
*
赤と黒のモダンテイストのワンルームは、学生の一人暮らしにしては片付いている。
「ねえ。男の人って、好きな女の子じゃなくてもキスできるよね?」
窓辺に配置された一人掛けの赤いソファに座り、買ってきたペットボトルのお茶を飲みながら何気なく聞いてみた。
「まあ……できないこともないかな」
陽介は離れたところで床にあぐらをかき、メンズのファッション誌を読んでいる。
「俺はどうせなら、好きな子とする方がいいけど」
「好きな子かぁ。そういえば、遼の彼女って陽介も見たことあるの?」
「んー、あるような、ないような」
「どっち?」
陽介は雑誌から顔を上げて私へ視線を向けた。じっと見つめたあと、またすぐに雑誌へ視線を戻す。
「なんでそんなこと聞くんだよ?」
逆に質問を返してきた。