雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
「遼と何かあった?」
私はしばらく悩んで、小さな声で陽介の方を見ずに答えた。
「どうしよう、陽介」
「ん?」
「この前、遼に…………キスされたの」
「――――エ?」
雑誌のページをめくりかけたまま陽介は停止した。
「遼は彼女がいるんだよね。それなのになんで私にそんなことしたんだと思う?」
「……そんなこと俺に聞かれても」
「陽介なら、遼と仲がいいから知ってるかなと思って。兄には絶対聞けないし」
「……単なる気まぐれかもよ。深い意味はないって、たぶん」
「そうなのかな。でも私、こんなの彼氏に知られたら、最悪別れないといけなくなっちゃうよ? もう、遼には会わない方がいいのかな」
遼のことが原因で、響と別れることにはなりたくない。
やっぱり距離を置いた方がいいのかもしれない。
あの“彼女”も遠回しに『遼に近づくな』と伝えてきたくらいだし。
「――別にいーんじゃね? 彼氏と別れることになっても」
陽介は冷蔵庫から缶コーヒーを取り出し、他人事のように言った。