雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
「なんでそこまで黒瀬さんにこだわる? そりゃあ、あの人の見た目はかなり良いし、好きになるのもわからなくもないけど」
缶コーヒーを一口飲み、テーブルに置いた陽介は、私の近くまで来て無表情に見下ろした。
「あの人じゃなくたって、他にも男はいるのにな」
「そうだけど。私は響がいいの」
「どの辺が? 陰で女作ってるかもしれないのに?」
窓枠にもたれ、ソファに座る私の顔を覗き込む。
「そんなの知ってる……。他にも女がいるかもしれないのなんて。わかってて付き合ったんだから」
私たちは睨み合うようにしてお互いを見ていた。
「給料はそこまで多くはないみたいだけど、安定してるし。転勤はほとんどないし。何より顔が好みなんだよね。彼に似た男の子を生みたい」
「あっそ。よっぽど相性がいいんだな」
二、三度度瞬きをしてから、私は視線を外す。
「……そうかも。普段は雑だけど、優しいときもあるしね」