雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
「遼、ご飯できたよ」
ニュース見るのをやめ振り返れば、食卓テーブルには手際良くビーフシチュー、ライス、サラダが並べられていた。
二人でテーブルに向かい合い、いただきますと言ってから食べ始める。
「口に合うといいんだけど……」
紗矢花は自信なさげにこちらの様子をうかがってきた。
「うん、美味しいよ。すごく」
熱いビーフシチューを口に運び正直な感想を告げる。
「ほんと? よかったー」
嬉しそうにサラダを頬張る紗矢花が、小動物に似ていて微笑ましい。
「遼、今日は一緒に居てくれてありがとう。……大好き」
サラダを食べる手を止め、彼女は無邪気に笑った。
最後に付け足した“大好き”は囁くような声だった。
「……僕も好きだよ、紗矢花」
微笑み返すと、彼女はまた嬉しそうに目を細める。
はたから見れば恋人同士のような会話。
――でも、違う。
「お兄ちゃんより好きかも。だって私の料理、美味しいって言ってくれたことないし」
「隼斗より好きって……。そんなの聞いたら隼斗泣くよ?」
内心喜びながらも嗜めると、紗矢花は眉をしかめ顔をそむけた。
「泣けばいいよ、普段私に感謝しない罰だから」