雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

「今日、紗矢花の誕生日なんだって?」


隣からこっそり、真鳥天音(あまね)が話しかけてくる。

彼はきちんとモデルを参考にして人物画を描いていた。


「そうだよ。よく知ってるね」

「悠里から聞いた」

「もしかして。今夜は彼氏とデートってこと? いいなー」


悠里がうっとりとした視線をよこしてくるから、私は乾いた笑いで返した。


「それほど、順調な関係ではないんだけどね」

「そうなの? もっと、うまくいってるのかと思ってた」


ピュアな悠里相手に誤魔化すのもどうかと思い、終わりかけの恋なのだと、肩をすくめる。


「何か辛いことあったら、話ぐらい聞くからさ。連絡して」


気だるげな表情に笑みを乗せ、天音が視線を前に戻す。


「うん。ありがとう」


そう言ってくれるだけで心強い。

本当に、いつ壊れるかわからない関係なのだから。






今年の誕生日は金曜日で、響は土日が休みだから、私はそのまま彼の家に泊まることになった。

トートバッグに着替えや洗面用具を入れ家を出る。



せっかくの誕生日なのに、なぜか気分は憂鬱だった。

きっと響を心から信用できていないせい。

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