雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
付き合い始めは、他の女の気配がするのを仕方なく思っていた。
けれど今は違う。
響が自分以外の女をそばに置いているのが許せない。
深く相手を知り、さらに好きになっていくにつれて独占欲が高まっていた。
最初は本当に、何番目でもいいから一緒にいさせて欲しいと思っていたのに……。
*
夕食はバレンタインのときにも使った、夜景の見える、雰囲気の良い居酒屋に入った。
料理の値段も普通の居酒屋より高め。
私たちは窓際の掘りごたつの席へ案内される。夜景がよく見渡せる場所だ。
隣のビルの屋上に建つ、カラフルなネオンの観覧車もよく見える。
飲み物や料理を頼んだあと、響はさっそく煙草に火をつけた。
「紗矢花、その服似合うよな」
淡い水色のワンピース。これは私もすごく気に入っていた。
「ホワイトデーに響が買ってくれたんだよ。覚えてる?」
「それくらい覚えてるって」
フッと煙を吐き出し響は笑う。
その自信に満ちた笑顔が、本当に好きだった。
飲み物が運ばれてきたので私たちは乾杯をし、夜景を見下ろした。
ゆらゆらと輝く夜景はずっと見ていても飽きない。
「紗矢花」
突然、響がテーブルに置いていた私の右手を取った。