雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

付き合い始めは、他の女の気配がするのを仕方なく思っていた。

けれど今は違う。

響が自分以外の女をそばに置いているのが許せない。

深く相手を知り、さらに好きになっていくにつれて独占欲が高まっていた。


最初は本当に、何番目でもいいから一緒にいさせて欲しいと思っていたのに……。





夕食はバレンタインのときにも使った、夜景の見える、雰囲気の良い居酒屋に入った。

料理の値段も普通の居酒屋より高め。

私たちは窓際の掘りごたつの席へ案内される。夜景がよく見渡せる場所だ。

隣のビルの屋上に建つ、カラフルなネオンの観覧車もよく見える。


飲み物や料理を頼んだあと、響はさっそく煙草に火をつけた。


「紗矢花、その服似合うよな」


淡い水色のワンピース。これは私もすごく気に入っていた。


「ホワイトデーに響が買ってくれたんだよ。覚えてる?」

「それくらい覚えてるって」


フッと煙を吐き出し響は笑う。

その自信に満ちた笑顔が、本当に好きだった。



飲み物が運ばれてきたので私たちは乾杯をし、夜景を見下ろした。

ゆらゆらと輝く夜景はずっと見ていても飽きない。


「紗矢花」


突然、響がテーブルに置いていた私の右手を取った。
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