☆彡Night and day『廼斗』☆彡〜悩んでナイト〜
「今日はいい手合わせが出来たな」


 厳は1人満足気に笑みを漏らす。スポーツジムから数えて3軒目、古柔術の道場を後にしてのことだった。


「さて、そろそろお迎えの時間だ」


 厳がそう呟くか呟かないかの内に、黒塗りのリムジンが音もなく停まった。


「ご苦労様です」


「いつもすいません、船井さん」


「毒島さんも園咲家のために身体を鍛えてらっしゃるんだ。私とは一蓮托生ですよ」


 厳は深々と腰を折り、助手席へと乗り込んだ。


「時に毒島さん。貴方はひいお爺様の代から園咲家にお仕えでしたね」


「ええ。私で4代目になります」


「私が3代目ですから、子供に恵まれていれば、毒島さんとご一緒出来ていたかも知れませんね」


 進行方向へ真っ直ぐ顔を向けたまま、船井は上品な、しかし寂しさが垣間見える微笑みを浮かべた。


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