☆彡Night and day『廼斗』☆彡〜悩んでナイト〜
 美麗の通う高校の門が見えてきた。


「そろそろですね」「ええ」


 学校の前を走る狭い癖に交通量の多い道も、側に有る旧国鉄の駅から溢れる人々も、厳に取っては見慣れた光景である。


しかしそんな普段と変わらない瞬間も、厳に取って一瞬たりとも気の抜けない、重要な時間だ。


いつもと同じ日常だからこそ、油断してはならない。その気の弛みが何に災いするか解らないからだ。


それは運転手の船井とて同じである。厳と言葉を交わしながら、進行方向からチラリとも視線を逸らすことはない。


「さあ着きました。お嬢様をお願いします」


「解りました」


 厳は車を降り、静かに扉を閉めると歩き始めた。


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