十年先のLOVE・STORY
私の、強い決心は、亜衣先輩の存在によって、あっさりと崩れ去った。

計算外だった。

だって、吹奏楽部に、好きになる人、いると思わなかったから。


私は、亜衣先輩の全てに、胸がきゅんとした。


亜衣先輩の担当は、コントラバス。

私の中学には、コントラバスは無かった。

大会で見かける中学でも、コントラバスがる学校って、少なかったと思う。

背の高い亜衣先輩に、天井にぶつかりそうな高さのコントラバスは、すごく似合っていた。

肩にコントラバスをもたれかけさせて、まるで楽器を抱くようにして弦を弾く。

「ボン・・ボン・・・」

亜衣先輩が弦を弾く度に、コントラバスから、甘い低音が流れてくる。

中学と同様、アルトサックスの担当になった私。

サックスは、最前列のクラリネットの後方の、2列目。

合奏の座席位置になると、亜衣先輩の位置は、私の左斜め後ろだった。

合奏中は、亜衣先輩の姿が見れない。

でも、亜衣先輩のコントラバスの音、

私の耳には、他のどの楽器の音よりも、鮮明に聞こえてきた。
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