愛ガ降る
あたしは何も言えず、大概くんのお父さんの墓前に座り手を合わせた。
“私は大概くんの事が大好きです。
こんなに素敵な彼に育ててくれてありがとうございました。”
心のなかでそう何度も繰り返し言い続け、大概くんがあたしをこの場所に連れて来てくれたことに感謝した。
それからしばらく、大概くんはずっとお墓を見つめていた。
その姿は、まるで久しぶりに会ったお父さんと話し込んでいるかのように見えた。
「じゃあ行こうか!」
大概くんは何かに満足したかのように振り向きながら言うと、あたしの手をとった。
「バスでもう少し先に行くと遊園地があるんだけど、これから行かない?
昔よく行った所なんだ。
…せっかくここまで来たんだし…。」
懐かしそうに話す大概くんのその言葉に迷うはずがない。
「もちろん行く!」
勢いよくそう言うと、大概くんはあたしの手を引き走ってバス停まで向かった。