春夏秋冬、君を包む風が吹く。
それでも、必ず、春は来る。
当たり前の日常が、一瞬で呑み込まれていった。
僕はただ、自分を守ることしかできなくて。
何も、何の力にも、なれなかった。
目の前の現実が理解できないまま。
非日常の世界に残された自分は、ただ、今にしがみつくことで精いっぱいで。
明日のことなど、考える余裕もなかった。
昨日まで悩んでいたことさえ、今思えば幸せだったからなのだと思う。
それらはすべて、当たり前の。
当たり前だと思っていた、日常に存在していたから。
3月。
暦はすっかり春なのに、この場所はまだまだ凍えるような寒さだ。
それでも。
小鳥のさえずりも。
夜空に輝く、星月の美しさも。
子どもの笑顔も。
暗闇から徐々に白んでいく、朝陽のエネルギーも。
僕らを励まそうとする、沢山の人々の想いも。
今まで気にも留めなかったことのすべてを感じながら。
心はゆっくりと、だけど確実に、明日へ向かう力に変わっていった。
信じよう。
僕らはきっと、ここから、立ち上がることができる。
僕らの日常を、穏やかな、優しい日々を、取り戻すために。
だって春が来る。
今はまだ、寒くても。
それでも、必ず、春は来るのだから。