春夏秋冬、君を包む風が吹く。
手を繋いだら。
足元に、春の野花が顔を出し始めた。
まだちょっと寒いけど、心が少しあったかくなる。
君との待ち合わせに向かう足取りは、なんだかうきうきして、ふわふわして、落ち着かない。
人生最大の勇気を出した、あの日から。
君に会うのは初めてで。
今朝からずっと、心臓の音がうるさくて。
うっすらとしたメイクが変じゃないかな、とか気になって。
待ち合わせ場所に君の姿を見かけて、一気に心臓が跳ね上がった。
「ご、ごめん、待った?」
「いや、そうでもないよ」
穏やかに、優しく微笑む君を、ぼんやりと見上げる。
「?どうかした??」
聞きたいことはいっぱいある。
なんで、私を選んでくれたんだろう。
特別目立ってたわけでもないし。
てか、どっちかっていうと地味だし。
私のどこが、よかったんだろう。
そんなことが頭の中を駆け巡っていた瞬間。
私の右手が、不意にとられる。
「!!」
「行こう?」
そう言って笑う、君と、繋いだ手。
包んだ風が、あったかくて。
「……うん」
真上に広がる桜の枝から、つぼみの膨らむ音が、聞こえたような気がした。