春夏秋冬、君を包む風が吹く。
ゲリラ豪雨
雨は嫌い。
湿気のせいで、癖の強い髪がすぐはねるし。
制服のスカートは、あっという間にびしょびしょになる。
駅までの距離を歩くだけなのに、足場が余りよくない道のせいで、靴の中まで水が染みて、かぽかぽになった状態で電車に乗らなくちゃならない。
今日なんて、朝から天気だったし、すっかり油断していた。
ここ数日のゲリラ豪雨。
まさか今日も来るとは……。
いつもの折り畳み傘は、今日家に干してきてしまった。
昇降口で一人、途方にくれる。
少し待てば、止むかな。
そう思って、空を見上げた時だった。
「これ、使えよ」
目の前には、今まで余り話したことのないクラスメイト。
ためらっていると、持っていた傘を私に押し付けて。
「俺んちすぐそこだから、返すのいつでもいいし」
「え、でも……」
「じゃあ、また明日」
そう言ってぶっきらぼうに、校門へと走っていく。
「……」
たぶん、家から持ってきてくれたのだろう。
綺麗に巻かれた、大き目の傘。
響き渡るほどの雨音と、小さくなっていく君の背中。
ありがとう。
心の中で君に小さく、つぶやいた。
……雨が少しだけ、好きになれるかもしれない。