ありえないだろ。
いつもと違う。
キーンコーンカーンコーン…

授業終わりのチャイムが鳴り響いた。
今から昼休みが始まる。
さっきまで静かだった教室は、一気に騒がしくなった。

飛び交う笑い声、何を言ってるかもわからない叫び声が
響き渡るその教室の真ん中に今、あたし、谷川麻希(タニガワ マキ)はいた。


「麻希!!お前アレ持ってきただろうなぁ?」


机を1つ挟んだ向こうでそう言っているのはあたしのイトコ、楽井未来(ラクイ ミライ)。
少し赤みがかかった茶髪で、目は常にキラキラ輝いてる。あとなぜかモテる。


「オイ!聞いてんのか!?」
「うっさいなあ!!だからさ、あたしは『あんたに勝ったらちょうだいね』って言っただけなの!!『あたしが負けたらあんたにあげる』なんて言ってないから!」
「意味わかんねーよ!」


あたしたちがしてるのは、先週終わった期末テストの話。
合計点数が未来より上だったら、未来にジュースをおごってもらう約束だった。
でもね、未来があたしより上だったらあたしはジュースをおごらなきゃいけないなんて約束はしてないの。1度も。


「お前俺より下だったんだからおごれよ!」
「だからそんな約束してないっつってんじゃん!!」
「ジュースよこせっつの!」


…あたしの話を全く聞こうとしない。
今捕まったら確実に強制的にジュースをおごらされる。
よし…こうなったら!!!
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