君を想えば
それから、

何分くらい話してたんだろう。

くだらない話もしたけど、

私の頭の中は真っ白だった。

康介へ正直に気持ちを伝えたほうが、

まだラクだったかもしれない。



「じゃあ明日な。」

「うん!気をつけてね。」


小さくなる康介の後ろ姿。

暗闇に飲み込まれていく。

康介…。

好きだよ。





「……っっ!!」



康介を好きだと思った瞬間、

我慢していた涙が一気に溢れ出した。

どうしていつもこうなのか。

まだ何も始まっていないのに、

始まる前から終わってしまった気分。

康介に彼女が居ないことを知って浮かれてしまった自分が情け過ぎた。




部屋に戻ると、

電気もつけず、

ベットの上に倒れこんだ。




「…………。」



静かに涙が零れる。

どうすることも出来ない歯痒さが、

涙へと変わる。



ーガラガラー



「ハル。」

「…………。」

「別にあいつに俺と南のこと言う必要なくね?」

「…………。」

「無視かよ。」

「…………。」





勝也のせいだ。

こうなるのはいつも、

勝也のせい。



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