君を想えば
「えぇぇぇ!?」


美夜子に伝えたのは帰りのこと。

驚いたその声に驚いた。

玄関中に美夜子の声がこだました。


「声がでかいって〜!!」

「だだだだだってビックリして…。

でも…良かったね〜ハル!!」

涙目になって喜んでくれた美夜子。

美夜子にはずっと相談してたから、

たぶん私と同じくらいに嬉しかったんだと思う。

私達は抱き合って喜んだ。

周りからどう思われても構わなかった。

喜びを分かち合える親友が居ることを、

みんなに見せびらかしたい気分だった。



「で、彼氏は?」

ニヤリと微笑み美夜子が言う。

「なんか地元の友達と約束があって先帰った。」

「付き合った初日に!?」

「うん。」

「…そうゆうとこ、康介って感じだね。」


確かにそうだ。

言われてみて気付いたけど、

普通は一緒に帰る……か?




初めての彼氏は、

初恋の相手。

付き合うことが、

まだよく分からないけど、

これから手探りでもなにかを掴んでいくんだ。

康介と一緒に。





「そういや、

勝也には言ったの?」

「…まだ。」

自転車の鍵を落としてしまった。

分かってるよ美夜子。

美夜子の言いたいこと。

本当は一番に伝えるべきなのは、

勝也だってこと。


「ちゃんと伝えるんだよ!じゃーね。」




昨日から勝也とは一言も話していない。

朝だって避けられたし、

今日も一回も教室には来てくれなかった。

今だって、

玄関に勝也の姿はなし。

一日中会わなかったのって、

初めてかも…。


「………帰ろ。」



今日はすっごくいい日なのに、

自転車を漕ぐ足が重い。


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