君を想えば
入学式も無事終えて、

緊張が続いた一日も静かに幕を閉じた。

勝也ママと私のママが一緒に来ていて、

やたらと写真を撮されたことだけは、

なぜか鮮明に覚えている。



「お前の母ちゃんスグ分かった。」

教室に戻ると康介が話しかけてきた。

そりゃ分かるよ。

あんなに娘の名前を必死に呼んでいれば…。

なんかママのせいで、

私恥ずかしい思いしてる。



「恥ずかしい…。」

「なんでだよ。

俺ああゆうの好きだけど。」

「嫌だよ〜!!」



なんだか、

康介って話しやすいかも。

康介とかって馴れ馴れしく呼んでるけど、

馴れ馴れしく呼べるくらい、

絡みやすい。

初めて会った感じがしない。



「帰りは彼氏と?」

「だから彼氏じゃないって。

幼なじみなだけ。」

「ふ〜ん。」

じーっとこっちを見つめる康介。

完全に疑われている。

初日からその勘違いだけはやめて欲しい。



「家も隣りなんだ。」

「ふ〜ん。

いいね。

そうゆうのも俺好き。」

「それは良かった…。」



なんにも良くないよ。

勘弁してよ。

そうゆう勘違いがあるから、

私に彼氏が出来ない。

勝也がいつも側に居るから、

みんな勘違いして、

私を諦める。



…まぁ、

これはかなり上から目線な言い方だけど、

でも理屈は合っている。

昔、

好きな人に意を決して、

一世一代の告白をした時に、

その男の子からこう言われた。



「勝也と付き合ってると思ってた。」





すごくショックだった。

周りから自分達がどう思われているのか、

その一言で充分に分かった。



今は少しでも、

勝也から離れなければならない時なんだ。

今がチャンスかもしれない。




「じゃーな。」

気が付けば、

終わりのチャイムが鳴り響いていた。

あっとゆう間の一日だった。






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