さよなら異邦人
 短い睡眠時間だったのにも関わらず、晴れやかな気分で朝を迎えた。


 いつものように娘が朝シャンを終えて、ドライヤーの音を居間の方にまで唸らせている。


 そして、朝寝坊の息子を起こす妻の声。


 繰り広げられている光景は、昨日までと全く同じなのに、何故か今朝に限っては違って見えた。


「おはよう」


「おはよ……」


「ん?」


 娘の里佳子が挨拶を返してくれた。


「なんか顔にでも付いてる?」


 娘をじっと見つめてしまった私に、訝しげな表情をしながら、里佳子は身支度を続けた。


「行ってきま~す」


「里佳子、朝御飯は?」


「朝マックするからいい!」


 短いスカートを翻し、娘は学校へ行った。


「うっす……」


「おはよう」


 一つ年下の弟は、寝癖だらけのボサボサ頭を掻きながら、食卓に腰を下ろした。まだ半分眠っているような目をし、何度も欠伸を繰り返した。


「読んだよ……」


 息子は、唐突に呟いた。


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