さよなら異邦人
 年甲斐も無く息子の言葉に心を躍らされた。


「そ、そうか……で、どうだった?」


「話すとめんどいから、学校行きながらメールするよ」


「おう。楽しみに待っているよ」


「そんなに楽しみにされてもなぁ」


 今直ぐにでも息子の口から聞きたかった。主人公と同年代の彼がどう感じ取ってくれたか。この先の指針にでもなってくれたらと、心の中で期待した。


 バスの時間が迫っている。そろそろ仕事に行かなければと思い、腰を上げると、妻が昼食用の弁当を手渡しながら、


「良かったわね」


 と、言った。


「うん。行って来るよ」


「行ってらっしゃい」


 団地の狭い階段を私はスキップでもするかのように下りた。自分でも浮かれているなと判る位、顔も綻び、近所の人に挨拶する声も何処か張りがあった。


 私は、息子からのメールが待ち遠しくて、受信したら直ぐにでも見れるように右手で握り締めていた。


 メール着信の音が鳴る。息子からだ……



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