さよなら異邦人
便器を抱え込むようにしてうずくまり、里佳子は苦しそうに吐き続けた。

僕は、彼女の背中を摩って上げる事しか出来ず、大丈夫かと声を掛けるのが精一杯。

何をどうして上げればいいのか判らず、ただおろおろするばかりだった。

「水、飲むか?」

力無く頷く里佳子。

僕は部屋に設置された冷蔵庫を開け、ミネラルウオーターを取り出そうとした。

が、見るとお金を払わなければ取り出せないようになっている。

値段を見ると普通の自販機の倍。

「マジかよ」

と思いながらも、僕は里佳子の為に一本買った。

「リカコ、水」

「……ありがと」

僕からペットボトルを受け取った彼女は、二口ばかり口にしたが、直ぐに吐き出した。

真っ青な顔をしている。

「横になった方がいいんじゃねえか?」

「……動けない」

「つかまれよ。運んでやる」

僕は里佳子の背中に腕を回し、彼女の左腕を自分の首に巻いた。

立ち上がった拍子に、バスローブの前が少しだけはだけて、白い胸元が覗いた。


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