さよなら異邦人
大きなベッドの上に彼女を寝かせ、巻かれていた腕を外そうとした。

その腕に力が込められ、僕は里佳子の上に引き倒された。

もう一方の腕が背中に回り、僕の身体をぎゅっと抱きしめる。

目と鼻の先に、里佳子の蒼ざめた顔がある。薄く開けられた目が、じっと僕を見つめていて、アルコール交じりの吐息が顔に掛かった。

「ど、どうしたんだよ」

彼女の唇が、微かに動いた気がした。

何を言ったのだろうと考える暇も無く、僕の唇がビール味に包まれた。

そんなに長いキスではなかったけれど、僕にはとんでもなく長い時間に感じられた。

僕は無意識のうちに自分から二度目を求め、里佳子に覆い被さった……。

彼女の白いうなじがほんのりと朱に染まり、鼻先にラベンダーの香りが漂った。

潤んだ里佳子の瞳に促されて、僕は彼女のバスローブを脱がそうとした。

僕の背中に回されていた彼女の腕が、いつの間にか肩口から胸に掛けて移動し、上半身を露にされていた。

二度目のキスは、里佳子の喘ぐ声で終わった……。



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