さよなら異邦人
「おい、加瀬、大丈夫か?」

遠くで僕を呼ぶ声がする。

リカコ、す、好きだぁ!

「今、なんか言った?」

ん!?目を開けると、里佳子がベッドの傍らで僕を心配そうに見つめていた。

「ようやく気付いたか」

「お、お前、大丈夫か?」

「はあ?それはこっちのセリフでしょ」

「お前、酔っ払って、トイレでげえげえ吐いてたんじゃ……」

「それ、自分でしょ。あんたをベッドまで運ぶの大変だったんだから」

「俺が……俺が酔っ払ったの?」

「そう。憶えてないの?」

僕は夢を見ていたのだろうか。いや、そんな事は無い筈だ。風呂から上がり、彼女が缶ビールを開けて乾杯して……。

うぅぅむ……記憶が定かじゃない。

「お酒、そんなに強くないんだったら、あんなに飲まなきゃよかったのに」

「俺、そんなに飲んだの?」

「アタシの分まで一気飲み。しまいにはアタシに抱きついて、しようよ、なんて……」

「ゲッ!?お、俺…そんな事言ったのか?」

「ふふふ…さあ、それはどうでしょ。自分の胸に聞いてごらん」

マジかよ……。俺って、最低最悪な男じゃんか……

がっくりとうな垂れた僕を、里佳子はニコニコしながら見ていた。


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