さよなら異邦人
中学の頃、たった一度だけ父に反抗した事があった。

別段これという理由は無かった。

僕なりの理由はあったと思うのだけれど、今振り返ってみるとそれは後付け的なものにしか思えない。

人はそれを反抗期という、都合のいい言葉で括ってしまうけれど、どうも僕からするとそれはしっくりと来ない。

確かに父に反抗するだけの材料は、普通に考えれば腐る程あった。

ラジオか何かの、何とか相談室とかに出て来るおばさんやおじさん達には、格好の材料になるかも知れないけれど。

僕の父……

いい歳をしながら息子の前でナンパはするし、平気な顔をして女を家に連れ込む。

思春期の息子が居ながらもだ。

毎日、昼日中から酒を飲むし、

本人曰く、

「アルコールは、俺の本妻だ」

と、のたまう程。

仕事は長続きせず、一番長くやっていた仕事がストリップ劇場の小屋主。

辞めた最短記録は六分二十三秒で、リフォーム会社の営業。理由を聞いて驚いた。

「事務やっている女子社員がたった一人で、しかも俺より一回りは年上なんだぜ」

そんな理由で、初出社してタイムカード押して直ぐに、退出を押すかなぁ……

これ、本当の話なんだ。







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