さよなら異邦人
「はい、あなた」


「ん?何だ?」


 きれいに包装されたそれは、大きさの割りに、手にすると重量感があった。


「何が入ってるんだ?」


「いいから開けて」


 包みを開けると、それは一冊の本が出て来た。


 妻が私に本をプレゼントするなんて、いったいどういう風の吹き回しだ?


 ハードカバー程大きくはなく、文庫本サイズの本。


 誰の本だろうと表紙を見ると……


「淳子……」


「これ一冊だけだけど、私のへそくりで作ったから……」


「それにしたって、よくお前が……」


「野うさぎだと、一冊から本を作れるって書いてあったから、あなたに成りすまして申し込んだの」


「成りすますって……」


「パスワード、生年月日だもの簡単に判っちゃったわよ」


「ありがとう……」


 私は自分の書いた作品名をしげしげと眺めていた。



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