さよなら異邦人
多分、うちはみんなの家と比べて、そう裕福ではないと思う。

けれど、不思議と生活に困ったという感覚にはなった事が無い。

父はこれまで頻繁に転職を繰り返し、その分無職の時期も結構あったけれど、家賃とか滞った事は無いし、学校から授業料の事で文句も言われた事は無い。

僕が何かを買って欲しいと言うと、直ぐにではないにしても必ず買って来てくれた。

こういった甲斐性は、息子の僕から見てもある方だと思う。

尤も、これには裏話があって、母が離婚した後も何かと面倒を見てくれたらしい。

その辺の事情を詳しく知ったのは随分と後になってからの事だった。

僕に対する父の接し方は、他人から見ると放任主義と言うか、自由主義のように感じられるそうだが、実際はまるで違うような気がする。

結構うざったくなる程、僕を構おうとする。

僕が何かをやろうとする事には殆ど文句は言わないから、その部分では放任主義に見られるのだろう。

だが、一日の出来事を報告しないと直ぐに不機嫌になる。

一番うざったく感じる時は、彼女の事。

彼女と言っても、厳密にはまだ僕はちゃんと女の子と付き合った事が無いから、しょっちゅうその事で、

「俺の息子のくせに、ナンパも出来ないのか?」

と言われる始末。

悪いけど、僕はリュウノスケと違って身持ちが固いんだ……

そう何度も言いそうになるんだけれど、どうも父と恋バナするのが苦手で、話が面倒臭くならないように、適当に返事をしては聞き流して来た。





 
 




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